懲役339年/伊勢ともか(全4巻【完結】) ラスト4ページは映画のエンドロールのよう
裏サンデーの連載作品。今(2015年8月)でも1部、2部と、最新話のエピローグがウェブ上で読めるよう。
最後まで読んで本当によかったと思えるような、素晴らしい物語構成の作品。
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中世ヨーロッパ風の世界、ここでは「前世」の存在が信じられており、社会制度にまで影響を与えている。国民の前世は役所で認定・管理され、前世で地位の高かったものは現世においても高い地位に就くことが約束されている。そして、このように「徳」が引き継がれるのと同じように、「罪」も引き継がれる…犯罪者の残した懲役も、次の生まれ変わりの人間が引き受けるのだ。そんな世界で大罪を犯した「ハロー・アヒンサー」。彼は339年という途方もない懲役刑をくらい、当然その刑期を全うすることなく死ぬ。そして、彼の罪を引き受けた少年「2代目ハロー」と、ある看守の出会いから物語は始まる。
想像以上の読後感
正直こんなに感動的な余韻が得られるとは思ってなかった…。いかんせん最初の方は絵が固く拙い(偉そうにすみません)。重みのある内容であるにもかかわらず、特に人物の絵がそれに追いついてきていないから、最初のほうはなんだかちぐはぐな印象。
絵を補って余りある演出と構成
それでもコミックスを買い続けたのは、ふとした瞬間に差し込まれる風景や小物の画面のセンスが良くて、「大犯罪者ハロー 残り懲役○○年」のナレーションのタイミングがかっこよく、そしてなにより全体の構成にぐいぐい惹きつけられたから。339年の懲役を消化していくわけで、当然、一人二人の生まれ変わりではお話は終わらない。何人もの「ハロー」の積み重ねから成る339年の物語。
最初の「2代目ハロー」の話は、40ページ弱で語られる一人の少年の物語。彼は、何が罪なのか、自分が一体何なのかも知らず、ただ刑務所の中でひたむきに生き続ける。少年の生に、「前世」という制度の虚しさが浮かび上がる。
伊勢ともか.懲役339年.1巻.第1部より.:言葉も理解せず、罪について考えることも答えることもできない。
次の「3代目ハロー」の話も、ページ数自体はそれほど多くない。このハローは、先代のハローと違い、体躯、人格ともに立派に育った青年。彼は、考えることができる。自分の罪は何なのか、生きる意味は何なのか。
伊勢ともか.懲役339年.1巻.第2部より.:他の囚人と比べても引けをとらない体格。利発で、分別のある模範囚的存在。
そして、これら2代のハローを見つめた看守が一人いる。彼は、この2人のハローの生き様を目の当たりにしたことで「前世」について疑問を持ち始める。そして、その懐疑は、4代目ハローとその看守に引き継がれ、それはこの世界に変革をもたらす一石となる。
伊勢ともか.懲役339年.1巻.第3部第1話より.:4代目ハローは普通のカワイイ女の子。そして看守。運命の二人。
2代目、3代目ハローの存在はどこか儚く、その話も1つの静かなオムニバスとしてまとまっている。それに対し、徐々に話が転がり始める4代目の話は100ページ弱。その次の5代目の話はさらにボリュームがある。最初は「前世」に縛られ、監獄の中で生を全うするだけの存在であったハローが、代を重ねるにつれて人との関わりを増やし、やがて大きな革命を成していく。
2代目のハローが種をまき、3代目がそれをあたため、4代目で芽を吹き、さらにその先のハロー達が大樹に育てる…そのように流れが大きくなっていく様が、4巻という少ない巻数のなかで話数配分も見事に作られている(絵もだんだん柔らかく素敵な感じに…)。
ラスト4ページは映画のエンドロールのよう
ラストはやはり339年後。現代の大学生によって、これら「前世」が信じられていた世界の物語が、とある小国のお話であったことが語られる。
人物の風貌や、「前世」というアイテムのために、何となくファンタジー物語のように感じていたのだけれど、この現代人の演出でそれが一気に私たちの世界に引き寄せられた感じ。物語が「ファンタジー」ではなく、「どこかであったかもしれない歴史」になり、現代と地続きになることでグッと重みを増したよう。
そして、ラスト4ページ。キャラの最後の表情から、いったん引きの風景画面になり、そして最後に339年の完了が告げられる…途方もない時間の流れの厚みが4ページに集約されている。夜空がキラキラしていてすごくきれい。文句無しの演出。そして表紙。最後に見返すと、背を向けているハロー達がそれぞれどんな表情でいるのかをこちらに想像させて、少し切なくなる。
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勢いを落とさず右肩上がりで、ラストはとてもとても高いところに着地した作品。本当に読んでよかった。
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新たに読んだ漫画買った漫画【2015年7月】
よかった順にざっくり並べて。作品名/読んだ巻数/(レーベル)/作者
【完結】
- おはようおかえり/1~5/鳥飼茜
- ボーダー/1~2/(ヤングジャンプコミックスDIGITAL)/渡辺ペコ
- 椿荘101号室/3/(マッグガーデンコミックス EDENシリーズ)/ウラモトユウコ
- たいようのいえ/13/タアモ
- 交響詩篇エウレカセブン/6/(角川コミックス・エース)/片岡 人生, 近藤 一馬, BONES
- ミュージアム/1~3/巴亮介
- 情熱のアレ/1~4/ (クイーンズコミックスDIGITAL)/花津 ハナヨ
- オンナミチ/5/北沢バンビ
【単巻】
- メトロポリス/手塚治虫
- あなたは あの星の下に /(クイーンズコミックスDIGITAL)/池谷理香子
- 秘密のタカラモノ/(クイーンズコミックスDIGITAL)/池谷理香子
- ブルー・サムシング /(マーガレットコミックス/谷川 史子
- 小さい羊は夢をみる/(りぼんマスコットコミックスDIGITAL)/池谷理香子
- 失恋日記 /(FEEL COMICS)/柏木ハルコ
- ツレがうつになりまして。/(幻冬舎文庫)/細川貂々
【続刊アリ】
- あれよ星屑/3/(ビームコミックス)/山田 参助
- 宇宙兄弟/26/小山宙哉
- 地獄のガールフレンド/1/鳥飼 茜
- おんなのいえ/4/鳥飼茜
- ライアー×ライアー/7/金田一蓮十郎
- 進撃の巨人/17/諫山創
- 僕だけがいない街/6/ (角川コミックス・エース)/三部 けい
- 回転銀河/1/海野つなみ
- さよなら絶望先生/1~13/久米田康治
- いないボクは蛍町にいる/2/タナカミホ
- ONE PIECE /77/(ジャンプコミックスDIGITAL)/尾田栄一郎
- 働かないふたり/4/吉田 覚
- 累/6/松浦だるま
- セトウツミ/1~3/ (少年チャンピオン・コミックス)/此元和津也
- 青春エレジーズ/1/永井 三郎
【雑誌、他】
- ヒバナ/2015年8/10号/ヒバナ編集部
【続刊アリ…でもひとまずココまで】
- 観用少女プランツ・ドール/1/川原由美子
- ひそひそ-silent voice-/1~2/(シルフコミックス)/藤谷 陽子
- SEX/1/(ヤングサンデーコミックス)上條淳士
- 日日べんとう/3 /(マーガレットコミックスDIGITAL)/佐野未央子
- ぼくらのふしだら/1/ (ヤングキングコミックス)大見武士
- センチメントの季節/1~3/(ビッグコミックス)/榎本ナリコ
- デビルズライン/1~3/花田陵
- 嘘喰い/1/(ヤングジャンプコミックスDIGITAL)/迫 稔雄
- のみじょし/1/迂闊
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ハピネス/押見修造(1巻【以下続刊】) 危うくて危うくてはきそう
押見修造の作風は確かに好みのはずなのに、なんだか気軽に手が出せない。私が読んだことがあるのは、近年の「惡の花」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」「ぼくは麻理のなか」の3作品だけだが、どれも「カースト下位的青少年」特有の惨めで恥ずかしくて目も当てられないような展開がこれでもかと描かれていて、苦しい。
青春のトラウマスイッチを押しまくるようないたたまれない状況を、どうしてこんなに的確に描けるのだろう。何かがうまくいかなくて、ゴロゴロと転げ落ちていく。読んでて心がゴリゴリ削られる。
そしてこの新作の「ハピネス」も、もう精神が削られる予感バリバリの作品。
―――
主人公は岡崎誠という高校生。彼はクラスの冴えない組に属していて、昼休みはいつもクラスのカースト上位的なヤツらにパシリにされている。でもよく見ると整った顔をしていて、イケテない割にちょっと雰囲気がある。幼少時代もカワイイ少年として描かれていて、幼気な感じも残っている。惡の華の高男を彷彿とさせるキャラ。
押見修造.ハピネス.1巻.第1話「ノラ」より.:おばさんからみれば「カワイイ少年」の誠。うっかり何かの拍子で身に余る「モテ」を掴んでしまいそうな…でもそんな好機をうまく扱う器用さもなく、持て余して、破滅へと走りだしてしまいそうな…絶妙な危ういビジュアル。
そんな彼はある日、夜の街歩いていたところを人間離れした運動神経を持つ少女に襲われてしまう(表紙の彼女)。押し倒され、首から血を吸われ…そして世に流布する吸血鬼物語の通り、彼自身も血が欲しくて欲しくてしょうがない怪物になってしまう。ああ不幸。
そうだ、血といえば…
血に敏感になってしまう岡崎。そして、そんな彼が学校に来て一番に反応するのは、女子生徒の経血……
押見修造.ハピネス.1巻.第2話「血のにおい」より.:目が座っている…視線の先はスカートの中。アウト。
もうこれだけで青春の破滅が目に見えてる…。そういや東京喰種とかの時にはあまり深く考えなかったけれど、身の回りで一番血を纏っているのは生理中の女だ。カッコイイ吸血鬼モノや人喰いモノで、女の股ぐらに悲劇の主人公が突っ込む様は見たことが無いし、今後も見たくもないけれど…押見修造ならやりかねない。というか100パーセントやる。かっこ悪くて気持ち悪い暴走の果てにズタボロになる様を見せつけられるんだ…
岡崎、イイ子なのに。もういつ彼の転落が始まるのかハラハラして吐きそう。見たくない、でも気になる…結局夢中でページをめくってしまう。
意外に持ちこたえる
しかし、この岡崎君は意外と持ちこたえる。彼は割と素直で、すぐには道を踏み外さない。周りの人にも恵まれている。
・パシられた時に、買い出しを手伝ってくれたり体調を気遣ってくれる友達がいる。
・家族がイイ。割と明るく健全な感じ。
・吸血鬼状態で暴走した際、奇跡的に受け止めてくれる女の子(雪子)と出会う。
・自分をパシッていたリア充軍団をそこまで本気で恨んでいない。
特にこの雪子の存在は大きそう。惡の華の時は、もう佐伯に転んでも仲村に転んでも苦しい感じだったけど、この子は今のところ安定感ある(屋上で一人でご飯食べているあたり、何か抱えているのだろうけど…)。
ちなみにもう一人、メインとなりそうな女キャラとして、菜緒という黒髪ロングのマドンナ的存在もいるのだけれど、どう見ても破滅ルート。お前はダメだ!!
押見修造.ハピネス.1巻.第3話「葛藤」より.:マドンナの菜緒に比べて地味顔の雪子と空、本来の誠の不器用そうな笑顔。束の間の穏やかなシーン。
全く油断できないけれど
こんな感じで、読み終わったときは、ああまだここで留まるかと安堵の溜息をついてしまった…。誠の健全さがありがたい。でもまったく安心できない。あげて落とすのが常套。まだ吸血鬼女についても何も語られていない。
何事もなく冴えない学生生活を終えたであろう純朴少年を、吸血鬼という仕掛けでもって、経血と暴力という青春暴走要素に無理やり巻き込んでいく。転げ落ちていくのではなく、留まって逃げ切って欲しいような、いつも通り容赦なくやっちゃって欲しいような…。怖いもの見たさの作品。とにかく先が気になる。
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新たに読んだ漫画買った漫画【2015年6月】
よかった順にざっくり並べて。作品名/読んだ巻数/(レーベル)/作者
【完結】
- パティスリーMON/1 ~10、完全版/(クイーンズコミックスDIGITAL)/きら
- 乱と灰色の世界/7巻/(ビームコミックス)/入江 亜季
- 吉祥天女/1~4/(フラワーコミックス)/吉田秋生
- 死にたがりと雲雀/1~2/山中ヒコ
- トモダチごっこ/1~3/ももち麗子
【単巻】
- 千九人童子ノ件<千九人童子ノ件>/(ビームコミックス)/羽生生 純
- 時計仕掛けのりんご/手塚治虫
- きっと可愛い女の子だから/(アクションコミックス)/柳本光晴
- 火の鳥 ―少女クラブ版―手塚治虫文庫全集/手塚治虫
- 昏倒少女/(マーガレットコミックスDIGITAL)/安藤ゆき
- われなべにとじぶた/(マーガレットコミックスDIGITAL)/山田可南
- おひっこし/沙村広明
- おとこのことおんなのこ/米代恭
- 虹ヶ原ホログラフ/浅野 いにお
【続刊アリ】
- シュトヘル/11/(BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)/伊藤 悠
- Sunny/1~5/(IKKI COMIX)/松本大洋
- A子さんの恋人/1/(ビームコミックス)/近藤 聡乃
- 清々と/3/(ヤングキングコミックス)/谷川史子
- きのう何食べた?/10/(モーニング KC)/よしなが ふみ
- 蒼天航路/1~25/王欣太, 李學仁
- 淡島百景/1/志村貴子
- 東京喰種トーキョーグール:re/3/(ヤングジャンプコミックスDIGITAL)/石田スイ
- 僕のヒーローアカデミア/4/(ジャンプコミックスDIGITAL)/堀越耕平
- ストレッチ/3/(ビッグコミックススペシャル)/アキリ
- 茄子/1/黒田硫黄
- 岡崎に捧ぐ/1/(コミックス単行本)/山本さほ
- 恋は雨上がりのように/2//(ビッグコミックス)/眉月じゅん
- ワカコ酒/4/新久千映
- とりかえ・ばや/6/(フラワーコミックスα)/さいとうちほ
- ゴールデンカムイ/3/(ヤングジャンプコミックスDIGITAL)/野田サトル
- メイドインアビス/1~3/(バンブーコミックス)/つくしあきひと
【雑誌、他】
- ハルタ 2015-JUNE volume 25 (ビームコミックス)
- 月刊!スピリッツ 2015年8/1号
- ヒバナ 2015年7/10号
- 月刊モーニング・ツー 2015年6月号
- FEEL YOUNG (フィールヤング) 2015年 6月号、7月号
【続刊アリ…でもひとまずココまで】
- ハネムーン サラダ/1~2/(ジェッツコミックス)/二宮ひかる
- ReReハロ/1/(マーガレットコミックスDIGITAL)南塔子
- ぼのぼの/1/(バンブーコミックス 4コマセレクション)いがらしみきお
- 花田少年史/1/一色まこと
- 死神くん/1~2/(ジャンプコミックスDIGITAL)/えんどコイチ
- 拝み屋横丁顛末記/1/(ZERO-SUMコミックス)/宮本 福助
- ヨイコノミライ [完全版]/1/(IKKI COMIX)/きづきあきら
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新たに読んだ漫画買った漫画【2015年5月】
よかった順にざっくり並べて。作品名/読んだ巻数/(レーベル)/作者
【完結】
- シックス ハーフ/1~11/(りぼんマスコットコミックスDIGITAL)/池谷理香子
- おやすみプンプン/1~13/(ヤングサンデーコミックス)/浅野いにお
- 愛しのアイリーン[新装版]/上下/新井 英樹
- 溺れるナイフ/1~17/ジョージ朝倉
- ヴォイニッチホテル/3/(ヤングチャンピオン烈コミックス)/道満晴明
- 攻殻機動隊/1~2//士郎正宗
- 水色の部屋/下/ゴトウ ユキコ
- かくかくしかじか/5(マーガレットコミックスDIGITAL)/東村アキコ
- 高校デビュー/1~14/(マーガレットコミックスDIGITAL)/河原 和音
- うみべの女の子/1~2/浅野いにお
- ストロボ・エッジ/1~10/(マーガレットコミックスDIGITAL)/咲坂伊緒
- 素晴らしい世界/1~2/(サンデーGXコミックス)/浅野いにお
- ソラニン/1~2/(ヤングサンデーコミックス)/浅野いにお
- となりの怪物くん/3~13/ろびこ
- 百人遊女/6/(SPコミックス)/坂辺周一
- 四月は君の嘘/11/新川直司
【単巻】
- ニューヨークで考え中/近藤 聡乃
- 起きて最初にすることは/(シトロンコミックス)/志村貴子
- 西園寺さんと山田くん/海野つなみ
- Wの庭園 WジュリエットII/(花とゆめコミックス)/望月花梨
- 純粋培養閲覧図/(花とゆめコミックス)/望月花梨
- 欲望バス/(白泉社文庫)/望月花梨
- ごはんのおとも/たな
- 31歳BLマンガ家が婚活するとこうなる/御手洗 直子
- 青に光芒/(マーガレットコミックスDIGITAL)/川端志季
【続刊アリ】
- それでも町は廻っている/14巻/(ヤングキングコミックス)/石黒正数
- デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション/1~2/(ビッグコミックス)/浅野いにお
- ママレード・ボーイ little/3/(マーガレットコミックスDIGITAL)/吉住渉
- きりひと讃歌/1/手塚治虫
- GIANT KILLING/35/ツジトモ, 綱本将也
- 束縛愛~彼氏を引きこもらせる100の方法~/1/(ヤングチャンピオン烈コミックス)小路啓之
- ラブラブエイリアン/2/岡村星
- ばらかもん/11/(デジタル版ガンガンコミックスONLINE)/ヨシノサツキ
- 懲役339年/1~3/(裏少年サンデーコミックス)/伊勢ともか
- 波よ聞いてくれ/1/沙村広明
- いないボクは蛍町にいる/1/タナカミホ
- 片隅乙女ワンスモア/1~2/(バーズコミックス)/伊藤正臣
- コンプレックス・エイジ/4/佐久間結衣
- 間宮さんといっしょ/1~2/(裏少年サンデーコミックス)ガオシ
- 宝石の国/4/市川春子
【雑誌、他】
- ヒバナ 2015年4/10号 、5/10号 、6/10号
【続刊アリ…でもひとまずココまで】
- 恋と軍艦/1~4/西炯子
- チェーザレ 破壊の創造者/1~3/惣領 冬実, 原 基晶
- アポロにさよなら Let’s go home!/1/道雪葵
- ヤスコとケンジ/1~3/(マーガレットコミックスDIGITAL)/アルコ
- 血界戦線/1~4/(ジャンプコミックスDIGITAL)/内藤泰弘
- 狼の口 ヴォルフスムント<狼の口 ヴォルフスムント>/1~6/(ビームコミックス(ハルタ))久慈 光久
- となりの外国人/1/宮本 福助
- Pumpkin Scissors/1/岩永亮太郎
- 花よりも花の如く/1/(花とゆめコミックス)成田美名子
- ランウェイの恋人/1/(フラワーコミックス)/しばの結花, 田中渉
- イシュタルの娘~小野於通伝~/1/大和和紀
- ハナハダハナヤ/1/若菜
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新たに読んだ漫画買った漫画【2015年4月】
よかった順にざっくり並べて。作品名/読んだ巻数/(レーベル)/作者
【完結】
- 真説 ザ・ワールド・イズ・マイン/1~5/新井 英樹
- ふれなばおちん/1~11/(マーガレットコミックスDIGITAL)/小田ゆうあ
- 思春期シンドローム/1~3/赤星トモ
- 喰う寝るふたり 住むふたり/5/(ゼノンコミックス)/日暮 キノコ
- ホームメイド/1~2/(りぼんマスコットコミックスDIGITAL)/谷川史子
- シガテラ/1~6/古谷実
- 彼女とカメラと彼女の季節/3~5/月子
- シリウスと繭/1~2/(マーガレットコミックスDIGITAL)/小森 羊仔
- miifa/3~4/ひなきみわ
【単巻】
- 福島鉄平短編集 アマリリス (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)/福島鉄平
- 福島鉄平短編集 スイミング (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)/福島鉄平
- 東京マーブルチョコレート ハロー、グッバイ、ハロー。/谷川史子
- 鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす 女と猫は呼ばない時にやってくる/(ジュールコミックス)/小池田マヤ
- おはよう楽園くん(仮)/中村明日美子
- スピカ ~羽海野チカ初期短編集~ (花とゆめコミックス)/羽海野チカ
- マイ・フェア・ネイバー/森野萌
【続刊アリ】
- 逃げるは恥だが役に立つ/5/海野つなみ
- 不思議な少年/9/山下和美
- 太陽が見ている(かもしれないから)/2/(マーガレットコミックスDIGITAL)/いくえみ綾
- 高台家の人々 3/(マーガレットコミックスDIGITAL)/森本梢子
- ちひろさん/3/(A.L.C. DX)/安田弘之
- 進撃の巨人/16/諫山創
- 健康で文化的な最低限度の生活/2/(ビッグコミックス)/柏木ハルコ
- orange /1~4/(アクションコミックス)/高野苺
- 黒/2/(ヤングジャンプコミックスDIGITAL)/ソウマトウ
- 俺物語!!/8/(マーガレットコミックス)/アルコ
- 富士山さんは思春期/6/(アクションコミックス)/オジロマコト
- たいようのいえ/1~12/タアモ
- 月刊少女野崎くん/6巻/(デジタル版ガンガンコミックスONLINE)/椿いづみ
- MAMA/3~4/売野 機子
- 応天の門/2/灰原 薬
- あさりちゃん/86/(てんとう虫コミックス)/室山まゆみ
【雑誌、他】
【続刊アリ…でもひとまずココまで】
- 幾百星霜/1/雁 須磨子
- おはようおかえり/1/鳥飼茜
- ちはやふる/1~2/末次由紀
- ホクサイと飯さえあれば/1/鈴木小波
- レビウス/1/(IKKI COMIX)/中田春彌
- お父さんは心配症/1/(りぼんマスコットコミックスDIGITAL)/岡田あ~みん
- 一週間フレンズ。/1巻/(デジタル版ガンガンコミックスJOKER)/葉月抹茶
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ユリ熊嵐 解釈と感想…所与のルールを打ち破って
ユリ熊嵐みてました。自分なりのキーワードと事象の解釈。抽象的なものをあんまり無理くり解釈するのもナンセンス…と思いつつ、こういう楽しみ方もやめられない。
断絶と取引と承認…この世界のルールとクマリア様
- 断絶
この世界には断絶がある。このこと自体は良いも悪いもない。地理的条件だったり、言語、文化、生物学的な種の違い…これらがあることはどうしようもない。人が海に入れば窒息してしまうし、魚が丘にあがっても死んでしまう。人がクマの森に入ったら食べられてしまうし、クマが人のいる里に降りれば殺されてしまう。隔たりを超えたら基本生きていけない。だから不可侵が原則。
- クマリア様、断絶の裁判所
この隔たりにはそれを司る神様のような存在がいる。そして、神様はそれら隔たりを超えたいと願う者にもチャンスを与えてくれる。そのように秩序と許しを与えてくれるのがクマリア様(=断絶の裁判所の3クマ達)。人魚姫の物語に人魚が人間になれる魔法があるように、この物語にもクマと人が壁を超えて結ばれる可能性がある。本物のスキを貫き約束のキスを果たすことがその条件。
絵本の話:クマリア様の司る空によって、相容れない二つの世界は隔てられいた。ただ、そこには友達の扉があって、「あなたのスキは本物?」の問いの元、己が身を引裂けばそこで思い合うもの同士は一緒になることができた。
- 断絶を超えて一緒になるために
絵本の話や結末をみるに、壁を超えて一緒になる…本物のスキ、約束のキスを叶えるために必要とされるのはおおきく2つ。
①自分を砕くこと(自己改革、自己犠牲):もともと何らかの隔たりがある者同士、そのままでは一緒にいられない。自分を変えたり、自分を犠牲にする覚悟や献身が必要。
②互いに思い合っていること:一方通行な独りよがりじゃダメ、二人ともが友だちの扉の前に立つ必要がある。あの場所で待ってる。
…なんだか結婚生活の秘訣みたいな内容。
- 取引と承認
「あなたのスキは本物?」という象徴的な問いと、承認されるということ。これは、決してクマリアや裁判所が「はい、お前のスキは本物!承認!お前のは違う!非承認!」とかそういう話ではないと思う。
Episode10 ライフセクシー:スキにはいろいろな形がある。だからクマリア様は断絶を超える全てのものに「あなたのスキは本物?」と問う。
どのようなかたちのスキであろうと、壁を越えようとする者についてクマリア様は門前払いをしたりしない。
るるが語った裁判の秘密:クマが女の子になるためには断絶の壁と取引をする。裁判所で、一番大事なものを差し出してユリ承認されれば女の子になれる。
それこそ、歪んだスキをもったユリーカでさえユリ承認されたのだ。「承認」自体は誰でもされる可能性があるのだと思う。
- あなたのスキは本物?
思うに、あなたのスキは本物?の問いは、「お前覚悟はできているか?」というニュアンスが強いように感じる。互いに己が身を砕かないとスキを手に入れることができない世界にお前は足を踏み入れるが、本当に大丈夫か?という出国審査。そこで差し出す「一番大切なもの」は覚悟の証の通行料、人魚姫の魔法の代償。どのような形であれ、覚悟を示したものをクマリア様や裁判所は承認してくれる。
そしてこれは、約束のキスへの第一歩。あくまで第一歩。本当にそれは本物のスキなのか?己が身を砕けるのか?相手も同じ場所にきてくれるのか?その覚悟の示し方は正しいのか?愛の求め方を間違っていないか?そこまでは裁判所やクマリア様は保証していない…本物のスキを手に入れて、断絶の向こうへ旅立てるかどうかは、当人の問題。
人魚姫はうまくいかなかった。承認されて、人になったけれど、思いは届かず悲しい自己犠牲で一人で旅立った。紅羽と銀子は二人に一緒になれた。
透明な嵐と蜜
- 蜜
スキの象徴として描かれていたのが星の色をした蜜。ミルンがるるに蜜壺を何度も差し出したり、紅羽と銀子のハニージンジャーティーだったり、紅羽の中に百合の蜜があったり。また、蜜子や銀子曰く「スキを持つヒトは蜜の味がする」。スキの思いは星色に輝く甘いユリの蜜。
- 透明
そんな蜜と相容れないのが透明。好きをあきらめず誰かを選ぶことは、愛を持ち、蜜をもつこと。透明な集団の中ではまさに文字通り異色の存在となる。だから透明な集団からは悪と認識され排除されるし、蜜の味故にクマにも目をつけられやすい。それでもスキを貫くか?それとも集団のなかで透明になって誰も選ばず何者にもならずやりすごすか?…本物のスキが欲しいなら、当然この試練と向き合わないといけない。
- 嵐、排除
集団で思考停止して、そこから逸脱することを悪とし排除すること。この透明な嵐のタチが悪いところは、その排除にもっともらしい理由づけがされていること…たとえば「クマと人が仲良くするなんて罪」といった正論っぽいルールをよりどころにしている。決して間違っていない、だから従わないのは悪。そんなロジックが簡単に成立してしまう。
実際には世界には断絶を超える可能性が与えられていて、たまにそれを超えようとする愛のある挑戦者が現れるが、思考停止しているものにはそれは悪にしか映らない。自分たちのルールや安寧を脅かしているように見えるから、強烈に排除する。中身のない強烈な圧力。
透明な嵐は色々なもっともらしい理由のもとに存在し続ける。でもそこで立ち止まって考えて、「べつにいいじゃん、やってみなよ。」と言う寛容さを持つこと。自分自身が「当然」と思っている我々のルールを見つめて、時にそれを改革すること。それが世界を変えること。ラストの銀子と紅羽の姿と、それに感化された女の子の姿は、そんな世界の可能性を示していった。
クマは原初的欲求が強い生き物
- クマの欲望
この作中では、特に蜜子が動物的なクマという感じで描かれていたように思う。食べる!いちゃつく!支配する!…等々、食欲性欲勝利欲等々、生き残るために必要なものを貪る生き物。クマも人も、こうした欲望を持つことは当然。でもそれだけでは本物のスキには程遠い。
11話で蜜子が銀子に「欲望を捨てることは死を意味する」と言っていた。人にもある原初的欲望だけれど、クマはそれがさらに強いし、その欲望が満たされるか否かが生き死にに直結する。ケモノの世界。だからそれを捨てた銀子は、まさにクマである自分を否定する…自分を引裂く選択をしたのだ。
- だから壁が無くなると
・小惑星クマリアの話:小惑星クマリアが爆発、そのかけらが流星群として地球に降り注いだところ世界中のクマが人を食べるになってしまったため、ヒトは熊を追い出すため「断絶の壁」を作った。
クマリア=秩序が爆発し、世界に隔たりがなくなってしまった。結果、こうしたクマの欲望を止めるものがなくなり、隣人であるヒトをたべてしまうようになった。人里に下りちゃう。人の蜜大好き。欲望に駆られて人を食べちゃうのだ。
だから、ヒトは自分たちの手で隔たりのを作り、そこに裁判という形でクマリアの片鱗たちが(3クマ達)宿った…という感じかな。
罪…嫉妬と攻撃、拒絶、傲慢
- 嫉妬
だれか一人を選ぶことは、他のだれかを捨てること。相手にも自分だけを見ていてほしいし、それを脅かすものは邪魔でしかない。 純花を見殺しにした銀子。銀子に銃を打つように紅羽を煽ったるる。果てに愛する者を殺し、その娘を手に入れようと他の者を排斥しようとしたユリーカ。
嫉妬は当然の思いだけれど…それが招くのは、純花が食べられたり、銀子が撃たれたりといった、多くの者たちの心や体が傷つく悲しい展開。スキの嫉妬が他者への刃となったときにそれは「罪」になるし、少なくともそうやって他の誰かを傷つける行動で本当にスキを得られた者はいない。
- 拒絶、傲慢などなど…そこかしこに転がる「罪」
他にも、ミルンの愛を何度も捨てたるるの拒絶、自分でなくて相手が変わることを望んだ紅羽の傲慢といった、間違った「スキ」の扱い方が描かれている。それらはいずれも「罪」と呼ばれ、正されなければ決して本物のスキに至ることはなかった。
連鎖するスキ、純花の役割
- 本物のスキをあらわした存在
純花は、スキを間違え忘れていた紅羽に本物のスキを教えてあげた。傲慢の罪に気づかせ、本物のスキに至る道を示してくれた。紅羽にとって、純花は本物のスキの象徴。だから、あなたのスキは本物?の問いを持つクマリア様が、紅羽の目の前には純花の形に映ったのだと思う。
- スキの繋がりが絶たれると…
純花はかませ犬的な存在といえなくもないけれど…かませ犬というにはもっと大切で神聖な存在。思うに、スキを教えてくれた人と、実際に思いを遂げる相手が違うというのは現実でもあるような気がする。例えば親が教えてくれた愛で、他の誰かを愛するように。そして、そのような愛し方を教えてくれる者がいなかったために悲しい道を歩んでしまったのが、ユリーカだったり、ヒトリカブトの銀子だったりするのだと思う。輪るピングドラムよろしく、スキは連鎖する。
るるが至った場所と紅羽銀子が至った場所
るる、銀子、紅羽…現実世界からみればみんな死んでしまったわけで…でもるると二人は、同じ場所にいるわけではなさそう。
最終話一歩手前で銀子をかばって死んだるるは、最終話で、ミルンと同じ「スキがキスになる場所」にいた。そしてその上空へと画面がパンアップ。そこには月の世界と森の世界の間の空でキスをする銀子と紅羽。
るるは、銀子をかばって死ぬという自己犠牲を成したが、銀子は紅羽の方を向いているから、銀子と一緒になることはなかった。けれど、「スキがキスになる場所」にたどり着くことができた。銀河鉄道の夜で、沈みゆく船で他者に道を譲った青年と姉弟が天上に至れたように、るるのために蜂に刺されて死んだミルンと、銀子のために銃に撃たれたるるは、同じ場所に行くことができたのだと思う。行き先は一つではない。あなたとどこへ行こうかという問いを持った旅路。
余談:まだはっきりわからないところ…
‐紅羽と銀子は、初めて出逢う前から壁の向こうの互いの声が聞けた
-ミルンが星降る夜に生まれた演出
誰かのスキが、るるのもとに来たのかなぁ。
感想
- ビジュアルはもう満点
画面はもうずっと綺麗で見ているだけで楽しめた。丸っこいクマ愛らしい、女の子綺麗、クマコスかわいい。絵本の絵なんかずっと眺めていられる。紅羽の家や色々なアイコン等、セットの細部までセンスもいい。そして最初から最後までそのクオリティが落ちなかったのがすごい。
- エロエロイチャイチャはやっぱりわからないかも
でも一方、ストーリー面であまりこのユリ熊の世界にがっちりハマることはできず、「次が気になる」というような気持ちも小さかった。
紅羽や銀子が結ばれるか否かにあまり関心がなかったのだ。二人が出会った瞬間から両想いで、至る所でみんながエロイチャする世界に興味が湧かなかった。ユリ裁判も、全裸の紅羽とエロいクマ達のじゃれ合いに若干引いたり。百合アニメ見て何言ってんだって話だが。
女子しか描かれない世界だからこそ、集団とか群れとかがうまく強調されていたような気がするので、百合が不要なんてことは全く思わないんですが。この甘さ、エロイチャも楽しめれば、もっともっとこの作品を好きになったと思う。
- それでも最後はグッと来た
死んで幸せENDはちょっと悲しい。ええ~やっぱりそうなの、みたいな。もともと抽象度が高い世界観だったからそこまで衝撃的ではないし、死ぬという言い方も正しくないのかもしれないけれど…。自己犠牲から始まるといっても、やはりキャラがこの世から離れるのは悲しい。スキが実る場所へと至れた二人やるるの姿は尊くて美しいけれど、それで万事OKとは思えない。私たちはこの世にいるのだから、この世であがいて欲しい気持ちの方が大きい。
だから、このみと女の子の物語の始まりという形で、この世界に希望が残されたのは本当に良かった。終わりだけれど、終わりじゃない。彼女たちのような存在は、いつか透明の嵐を砕く希望。最終話でOPが始まる演出ってよくあるけれど、これは本当に感動した。
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3か月間、存分に楽しみましたユリ熊嵐。漫画はまだまだ続くようで…こちらも読む。
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