漫画のメモ帳

早口で漫画について話すブログ

新たに読んだ漫画買った漫画【2015年6月】

よかった順にざっくり並べて。作品名/読んだ巻数/(レーベル)/作者

 

【完結】

  • パティスリーMON/1 ~10、完全版/(クイーンズコミックスDIGITAL)/きら
  • 乱と灰色の世界/7巻/(ビームコミックス)/入江 亜季
  • 吉祥天女/1~4/(フラワーコミックス)/吉田秋生
  • 死にたがりと雲雀/1~2/山中ヒコ
  • トモダチごっこ/1~3/ももち麗子

 

【単巻】

  • 千九人童子ノ件<千九人童子ノ件>/(ビームコミックス)/羽生生 純
  • 時計仕掛けのりんご/手塚治虫
  • きっと可愛い女の子だから/(アクションコミックス)/柳本光晴
  • 火の鳥 ―少女クラブ版―手塚治虫文庫全集/手塚治虫
  • 昏倒少女/(マーガレットコミックスDIGITAL)/安藤ゆき
  • われなべにとじぶた/(マーガレットコミックスDIGITAL)/山田可南
  • おひっこし/沙村広明
  • おとこのことおんなのこ/米代恭
  • 虹ヶ原ホログラフ/浅野 いにお

 

【続刊アリ】

 

【雑誌、他】

 

【続刊アリ…でもひとまずココまで】

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新たに読んだ漫画買った漫画【2015年5月】

よかった順にざっくり並べて。作品名/読んだ巻数/(レーベル)/作者

 

【完結】

 

【単巻】

 

【続刊アリ】

 

雑誌、他】

  • ヒバナ 2015年4/10号 、5/10号 、6/10号

 

【続刊アリ…でもひとまずココまで】

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新たに読んだ漫画買った漫画【2015年4月】

 

よかった順にざっくり並べて。作品名/読んだ巻数/(レーベル)/作者

【完結】

  • 真説 ザ・ワールド・イズ・マイン/1~5/新井 英樹
  • ふれなばおちん/1~11/(マーガレットコミックスDIGITAL)/小田ゆうあ
  • 思春期シンドローム/1~3/赤星トモ
  • 喰う寝るふたり 住むふたり/5/(ゼノンコミックス)/日暮 キノコ
  • ホームメイド/1~2/(りぼんマスコットコミックスDIGITAL)/谷川史子
  • シガテラ/1~6/古谷実
  • 彼女とカメラと彼女の季節/3~5/月子
  • シリウスと繭/1~2/(マーガレットコミックスDIGITAL)/小森 羊仔
  • miifa/3~4/ひなきみわ

 

【単巻】

 

【続刊アリ】


【雑誌、他】


【続刊アリ…でもひとまずココまで】

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編集

ユリ熊嵐 解釈と感想…所与のルールを打ち破って

 

TVアニメ「 ユリ熊嵐 」エンディングテーマ「 TERRITORY 」

ユリ熊嵐みてました。自分なりのキーワードと事象の解釈。抽象的なものをあんまり無理くり解釈するのもナンセンス…と思いつつ、こういう楽しみ方もやめられない。

 

断絶と取引と承認…この世界のルールとクマリア様

  • 断絶

この世界には断絶がある。このこと自体は良いも悪いもない。地理的条件だったり、言語、文化、生物学的な種の違い…これらがあることはどうしようもない。人が海に入れば窒息してしまうし、魚が丘にあがっても死んでしまう。人がクマの森に入ったら食べられてしまうし、クマが人のいる里に降りれば殺されてしまう。隔たりを超えたら基本生きていけない。だから不可侵が原則。

  • クマリア様、断絶の裁判所

この隔たりにはそれを司る神様のような存在がいる。そして、神様はそれら隔たりを超えたいと願う者にもチャンスを与えてくれる。そのように秩序と許しを与えてくれるのがクマリア様(=断絶の裁判所の3クマ達)。人魚姫の物語に人魚が人間になれる魔法があるように、この物語にもクマと人が壁を超えて結ばれる可能性がある。本物のスキを貫き約束のキスを果たすことがその条件。

絵本の話:クマリア様の司る空によって、相容れない二つの世界は隔てられいた。ただ、そこには友達の扉があって、「あなたのスキは本物?」の問いの元、己が身を引裂けばそこで思い合うもの同士は一緒になることができた。

  • 断絶を超えて一緒になるために

絵本の話や結末をみるに、壁を超えて一緒になる…本物のスキ、約束のキスを叶えるために必要とされるのはおおきく2つ。

①自分を砕くこと(自己改革、自己犠牲):もともと何らかの隔たりがある者同士、そのままでは一緒にいられない。自分を変えたり、自分を犠牲にする覚悟や献身が必要。

②互いに思い合っていること:一方通行な独りよがりじゃダメ、二人ともが友だちの扉の前に立つ必要がある。あの場所で待ってる。

…なんだか結婚生活の秘訣みたいな内容。

  • 取引と承認

「あなたのスキは本物?」という象徴的な問いと、承認されるということ。これは、決してクマリアや裁判所が「はい、お前のスキは本物!承認!お前のは違う!非承認!」とかそういう話ではないと思う。

Episode10 ライフセクシー:スキにはいろいろな形がある。だからクマリア様は断絶を超える全てのものに「あなたのスキは本物?」と問う。

どのようなかたちのスキであろうと、壁を越えようとする者についてクマリア様は門前払いをしたりしない。

るるが語った裁判の秘密:クマが女の子になるためには断絶の壁と取引をする。裁判所で、一番大事なものを差し出してユリ承認されれば女の子になれる。

それこそ、歪んだスキをもったユリーカでさえユリ承認されたのだ。「承認」自体は誰でもされる可能性があるのだと思う。

  • あなたのスキは本物?

思うに、あなたのスキは本物?の問いは、「お前覚悟はできているか?」というニュアンスが強いように感じる。互いに己が身を砕かないとスキを手に入れることができない世界にお前は足を踏み入れるが、本当に大丈夫か?という出国審査。そこで差し出す「一番大切なもの」は覚悟の証の通行料、人魚姫の魔法の代償。どのような形であれ、覚悟を示したものをクマリア様や裁判所は承認してくれる。

そしてこれは、約束のキスへの第一歩。あくまで第一歩。本当にそれは本物のスキなのか?己が身を砕けるのか?相手も同じ場所にきてくれるのか?その覚悟の示し方は正しいのか?愛の求め方を間違っていないか?そこまでは裁判所やクマリア様は保証していない…本物のスキを手に入れて、断絶の向こうへ旅立てるかどうかは、当人の問題。

人魚姫はうまくいかなかった。承認されて、人になったけれど、思いは届かず悲しい自己犠牲で一人で旅立った。紅羽と銀子は二人に一緒になれた。

 

透明な嵐と蜜

スキの象徴として描かれていたのが星の色をした蜜。ミルンがるるに蜜壺を何度も差し出したり、紅羽と銀子のハニージンジャーティーだったり、紅羽の中に百合の蜜があったり。また、蜜子や銀子曰く「スキを持つヒトは蜜の味がする」。スキの思いは星色に輝く甘いユリの蜜。

  • 透明

そんな蜜と相容れないのが透明。好きをあきらめず誰かを選ぶことは、愛を持ち、蜜をもつこと。透明な集団の中ではまさに文字通り異色の存在となる。だから透明な集団からは悪と認識され排除されるし、蜜の味故にクマにも目をつけられやすい。それでもスキを貫くか?それとも集団のなかで透明になって誰も選ばず何者にもならずやりすごすか?…本物のスキが欲しいなら、当然この試練と向き合わないといけない。

  • 嵐、排除

集団で思考停止して、そこから逸脱することを悪とし排除すること。この透明な嵐のタチが悪いところは、その排除にもっともらしい理由づけがされていること…たとえば「クマと人が仲良くするなんて罪」といった正論っぽいルールをよりどころにしている。決して間違っていない、だから従わないのは悪。そんなロジックが簡単に成立してしまう。

実際には世界には断絶を超える可能性が与えられていて、たまにそれを超えようとする愛のある挑戦者が現れるが、思考停止しているものにはそれは悪にしか映らない。自分たちのルールや安寧を脅かしているように見えるから、強烈に排除する。中身のない強烈な圧力。

透明な嵐は色々なもっともらしい理由のもとに存在し続ける。でもそこで立ち止まって考えて、「べつにいいじゃん、やってみなよ。」と言う寛容さを持つこと。自分自身が「当然」と思っている我々のルールを見つめて、時にそれを改革すること。それが世界を変えること。ラストの銀子と紅羽の姿と、それに感化された女の子の姿は、そんな世界の可能性を示していった。

クマは原初的欲求が強い生き物

  • クマの欲望

この作中では、特に蜜子が動物的なクマという感じで描かれていたように思う。食べる!いちゃつく!支配する!…等々、食欲性欲勝利欲等々、生き残るために必要なものを貪る生き物。クマも人も、こうした欲望を持つことは当然。でもそれだけでは本物のスキには程遠い。

11話で蜜子が銀子に「欲望を捨てることは死を意味する」と言っていた。人にもある原初的欲望だけれど、クマはそれがさらに強いし、その欲望が満たされるか否かが生き死にに直結する。ケモノの世界。だからそれを捨てた銀子は、まさにクマである自分を否定する…自分を引裂く選択をしたのだ。

  • だから壁が無くなると

小惑星クマリアの話:小惑星クマリアが爆発、そのかけらが流星群として地球に降り注いだところ世界中のクマが人を食べるになってしまったため、ヒトは熊を追い出すため「断絶の壁」を作った。

クマリア=秩序が爆発し、世界に隔たりがなくなってしまった。結果、こうしたクマの欲望を止めるものがなくなり、隣人であるヒトをたべてしまうようになった。人里に下りちゃう。人の蜜大好き。欲望に駆られて人を食べちゃうのだ。

だから、ヒトは自分たちの手で隔たりのを作り、そこに裁判という形でクマリアの片鱗たちが(3クマ達)宿った…という感じかな。

 

罪…嫉妬と攻撃、拒絶、傲慢

  • 嫉妬

だれか一人を選ぶことは、他のだれかを捨てること。相手にも自分だけを見ていてほしいし、それを脅かすものは邪魔でしかない。 純花を見殺しにした銀子。銀子に銃を打つように紅羽を煽ったるる。果てに愛する者を殺し、その娘を手に入れようと他の者を排斥しようとしたユリーカ。

嫉妬は当然の思いだけれど…それが招くのは、純花が食べられたり、銀子が撃たれたりといった、多くの者たちの心や体が傷つく悲しい展開。スキの嫉妬が他者への刃となったときにそれは「罪」になるし、少なくともそうやって他の誰かを傷つける行動で本当にスキを得られた者はいない。

  • 拒絶、傲慢などなど…そこかしこに転がる「罪」

他にも、ミルンの愛を何度も捨てたるるの拒絶、自分でなくて相手が変わることを望んだ紅羽の傲慢といった、間違った「スキ」の扱い方が描かれている。それらはいずれも「罪」と呼ばれ、正されなければ決して本物のスキに至ることはなかった。

連鎖するスキ、純花の役割

  • 本物のスキをあらわした存在

純花は、スキを間違え忘れていた紅羽に本物のスキを教えてあげた。傲慢の罪に気づかせ、本物のスキに至る道を示してくれた。紅羽にとって、純花は本物のスキの象徴。だから、あなたのスキは本物?の問いを持つクマリア様が、紅羽の目の前には純花の形に映ったのだと思う。

  • スキの繋がりが絶たれると…

純花はかませ犬的な存在といえなくもないけれど…かませ犬というにはもっと大切で神聖な存在。思うに、スキを教えてくれた人と、実際に思いを遂げる相手が違うというのは現実でもあるような気がする。例えば親が教えてくれた愛で、他の誰かを愛するように。そして、そのような愛し方を教えてくれる者がいなかったために悲しい道を歩んでしまったのが、ユリーカだったり、ヒトリカブトの銀子だったりするのだと思う。輪るピングドラムよろしく、スキは連鎖する。

るるが至った場所と紅羽銀子が至った場所

るる、銀子、紅羽…現実世界からみればみんな死んでしまったわけで…でもるると二人は、同じ場所にいるわけではなさそう。

 最終話一歩手前で銀子をかばって死んだるるは、最終話で、ミルンと同じ「スキがキスになる場所」にいた。そしてその上空へと画面がパンアップ。そこには月の世界と森の世界の間の空でキスをする銀子と紅羽。

るるは、銀子をかばって死ぬという自己犠牲を成したが、銀子は紅羽の方を向いているから、銀子と一緒になることはなかった。けれど、「スキがキスになる場所」にたどり着くことができた。銀河鉄道の夜で、沈みゆく船で他者に道を譲った青年と姉弟が天上に至れたように、るるのために蜂に刺されて死んだミルンと、銀子のために銃に撃たれたるるは、同じ場所に行くことができたのだと思う。行き先は一つではない。あなたとどこへ行こうかという問いを持った旅路。

 

余談:まだはっきりわからないところ…

‐紅羽と銀子は、初めて出逢う前から壁の向こうの互いの声が聞けた

-ミルンが星降る夜に生まれた演出

 誰かのスキが、るるのもとに来たのかなぁ。

 

感想

  •  ビジュアルはもう満点

画面はもうずっと綺麗で見ているだけで楽しめた。丸っこいクマ愛らしい、女の子綺麗、クマコスかわいい。絵本の絵なんかずっと眺めていられる。紅羽の家や色々なアイコン等、セットの細部までセンスもいい。そして最初から最後までそのクオリティが落ちなかったのがすごい。

  •  エロエロイチャイチャはやっぱりわからないかも

でも一方、ストーリー面であまりこのユリ熊の世界にがっちりハマることはできず、「次が気になる」というような気持ちも小さかった。

紅羽や銀子が結ばれるか否かにあまり関心がなかったのだ。二人が出会った瞬間から両想いで、至る所でみんながエロイチャする世界に興味が湧かなかった。ユリ裁判も、全裸の紅羽とエロいクマ達のじゃれ合いに若干引いたり。百合アニメ見て何言ってんだって話だが。

女子しか描かれない世界だからこそ、集団とか群れとかがうまく強調されていたような気がするので、百合が不要なんてことは全く思わないんですが。この甘さ、エロイチャも楽しめれば、もっともっとこの作品を好きになったと思う。

  • それでも最後はグッと来た

死んで幸せENDはちょっと悲しい。ええ~やっぱりそうなの、みたいな。もともと抽象度が高い世界観だったからそこまで衝撃的ではないし、死ぬという言い方も正しくないのかもしれないけれど…。自己犠牲から始まるといっても、やはりキャラがこの世から離れるのは悲しい。スキが実る場所へと至れた二人やるるの姿は尊くて美しいけれど、それで万事OKとは思えない。私たちはこの世にいるのだから、この世であがいて欲しい気持ちの方が大きい。

だから、このみと女の子の物語の始まりという形で、この世界に希望が残されたのは本当に良かった。終わりだけれど、終わりじゃない。彼女たちのような存在は、いつか透明の嵐を砕く希望。最終話でOPが始まる演出ってよくあるけれど、これは本当に感動した。

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3か月間、存分に楽しみましたユリ熊嵐。漫画はまだまだ続くようで…こちらも読む。

 

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今月新たに読んだ漫画【2015年3月】

よかった順にざっくり並べて。作品名/読んだ巻数/作者

仕事のストレスに比例して増える漫画の数…今月はかなりいったぞ…

 

【完結】

秒速5センチメートル/1~2/新海誠, 清家雪子

・Piece/1~10/芦原妃名子

ママはテンパリスト/1~3/東村アキコ

天然コケッコー/1~9/くらもちふさこ

僕等がいた/1~16/小畑友紀

彼氏彼女の事情/1~21/津田雅美

フルーツバスケット/1~23/高屋奈月

・チキンパーティ/1~3/金田一蓮十郎

・ごんたイズム/1~3/カツヤマケイコ

アンラッキーヤングメン/1~2/藤原 カムイ, 大塚 英志

・夢喰い王子の憂鬱/1~2/阿仁谷 ユイジ

・ナイーヴ 完全版/1~2/二宮ひかる

【単巻】

・となりのロボット/西UKO

・わがままちえちゃん/志村貴子

・ダブルマリッジ/二宮ひかる

ベイビーリーフ/二宮ひかる

・終電にはかえします/雨隠ギド

・こっそり行きたい 欲望ご利益神社/ichida, 戸部 民夫

・おもいで/二宮ひかる

・アイリウム/小出もと貴

・スキエンティア /戸田誠二

・こいあじ─西炯子短篇集─/西 炯子

・千代に八千代に/大澄剛

曽根富美子傑作選 子どもたち!~今そこにある暴力~/上下/曽根富美子

曽根富美子傑作選 人間やめたくない! ~止まらないイジメ/曽根 富美子

曽根富美子傑作選 家族再生~心理療法の現場から/曽根 富美子

曽根富美子傑作選 死母性の庭 /曽根富美子

・少年少女ランドマーク/大澄剛

・同棲終了日記~10年同棲した初彼に34歳でフラれました~/おりはらさちこ

・レジより愛をこめて~レジノ星子~/曽根富美子

・甘えんじゃねえよ/ルネッサンス吉田

・にじいろシークレット/楽時 たらひ

【続刊アリ】

・先生の白い嘘/3/鳥飼茜

進撃の巨人/1~15/諫山創

・東京喰種トーキョーグール:re 2/石田スイ

ライアー×ライアー/1~6/金田一蓮十郎

・おんなのいえ/1~3/鳥飼茜

健康で文化的な最低限度の生活/1/柏木ハルコ

昭和元禄落語心中/1~7/雲田はるこ

・独身OLのすべて/2/まずりん

このゆびとまれ/1~3/大澄剛

・思春期シンドローム/1~2/赤星トモ

・ゆうべはお楽しみでしたね/1/金田一蓮十郎

・亜人ちゃんは語りたい/1/ペトス

魔法使いのお時間よ 3 愉快な隣人/3/内海まりお

・ぼくは麻理のなか/5/押見修造

球場ラヴァーズ ~私を野球につれてって~/1~2/石田敦子

・GROUNDLESS/1~3/影待蛍太

ユリ熊嵐 /1/イクニゴマキナコ, 森島明子

・ちはるさんの娘/1~2/西炯子

ヒナまつり /8 /大武 政夫

・ラララ/1~3/金田一蓮十郎

・私を連れて逃げて、お願い。/1/松田 洋子

・ゴールデンカムイ/2/野田サトル

・累/5/松浦だるま

・GENTE/1/オノ・ナツメ

【雑誌】

・楽園 Le Paradis 第10号

【続刊アリ…でもひとまずココまで】

・37.5℃の涙/1/椎名チカ

・ハスク・エディン husk of Eden/1/如月 芳規

・オルガの心臓/1/雨宮もえ

BLOOD ALONE/1/高野真之

モブサイコ100/1/ONE

 

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二宮ひかる/シュガーはお年頃(1~3巻【完結】) 私の想うあなたが語りたいことが全ての真実

シュガーはお年頃 3 (ヤングキングコミックス)

ほんとうの気持ちなんて 本人にだってわからない その時その状況によっても変わるじゃない? 刻一刻と変わるそれを アサミはていねいに伝えてくれた 断られたって差し出しただろうわたしのそれを わざわざ手を伸ばして取りに来てくれた 初めてだったんだあんな事… あんな子… はじめて… それはまるで 運命の恋人に出会ったかのような…

二宮ひかる.シュガーはお年頃.3巻.第17話「初恋」より

女子高生のハタナカとアサミ2人の物語。二宮ひかるの他の作品同様、セックスや繊細な心情描写が多めで、思春期の青臭くどろっとした雰囲気がある。百合ものともいえるが、二人がいちゃついたり、桃色の恋心でウキウキしちゃうような展開は無い。

肝は「相手を想い、受け入れ、信じること」…これは綺麗事ではない。おおよそ高校生には似つかわしくない、友情や恋や百合のどれにも当てはまらないような、執念と思い込みのようなものがそこにはある。それでも最後は切なくて、不思議とすがすがしさも感じる。何回読み返しても「すごいものを読んだなぁ」と思う。

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主人公のハタナカケイコは、ややがさつな女子高生。昼食を一緒に食べ、一緒にトイレに行き…そんな女子集団のお作法にどこかうまくついていけず、窮屈さを感じている。そんな彼女の将来の夢は「娼婦になること」(男性経験もなく、痴漢にあって腰を抜かすような普通の子なのだが…)。これは、自分が女として劣っているという劣等感から生じた「求めてくれる誰かがいないと何物にもなれない」という寂しさゆえの結論。せめて体だけは必要とされて…なんてことを思っている。作品のテーマのひとつは、このハタナカの寂しさの解消。

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二宮ひかる.シュガーはお年頃.2巻.第12話「どうして」より.:子のストーリーの核の1つ。寂しさの原因。これにたどり着くことすら最初はできなかったハタナカ。

もう一人の主人公、アサミツバキ。群れない孤高の美少女。黒髪ストレートの優等生風の容貌だけれど、「中学生時代に売春していて、今も頼めばヤラせてくれる」なんて噂が流れている。そして、この噂は少なからず嘘ではない…。本当に売春をしていた?どんな闇を抱えている?アサミの過去や真意の謎も、作品の重要な鍵。

ある日、ハタナカは些細なことで女子集団からハブられてしまったことをきっかけに、図書室に一人たたずむアサミに声をかける。ハタナカも、噂話をする周囲の人間同様、好奇心からアサミの真実を知りたいと思う。けれど、まっすぐで優しくい彼女だから、結局「アサミがいやなら」と詮索はしない。彼女の噂話や悪口には加わらないし、悪目立ちしている彼女と一緒にいることを厭わない。「娼婦になりたい」なんて突飛な思いもアサミには伝えちゃう。そうして二人は仲良くなっていく。

明確に描かれる二人のギャップ…アサミの闇がより深く見える

ハタナカは大変わかりやすい人物。行動や気持ちに嘘がない。家族に大切にされ、清潔な服を纏い、母親手作りのおいしい料理を毎日食べて育った彼女。体を売ることのリスクも理解せず「娼婦になりたい」なんて言ってしまう…育ちのいいお嬢さんなのだ。

一方でアサミ。彼女の過去や真意は、後半の怒涛の展開や、ラストを紐解くためにはぜひ知りたい内容なのだけれども、アサミはなかなか「事実」を語ってくれない。作中の言葉を借りれば、彼女は「事実を捻じ曲げ、自分の信じたいことを真実とする。」

そして、彼女の育ちはハタナカとは反対。中学生のうちから金を取るセックスをし、ヤバめの男と関わりを持っている。家は貧乏。荒れた地元を抜け出したくて、何らかの手口を使って遠くの高校まで来た。彼女視点のパートもあるけれど、それでも彼女のことをつかみきれない…事実を捻じ曲げているから、彼女の語りがどこまで真実かはっきりしない分部があるのだ。

心を通わせたけれど

自分のことを「特別」と言ってくれるアサミとの日々の中で、ハタナカの寂しさは消えていく。誰からも必要とされないとの思いに端を発した「娼婦になりたい」という思いは、アサミによって取り除かれた。

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二宮ひかる.シュガーはお年頃.2巻.第12話「どうして」より.:誰かに選ばれることの喜びに足取りも軽いハタナカ。明るい夜道と軽い足取りの良い描写…だけどここからが本番。

ここでめでたしめでたし…ではない。

ある日突然、アサミは姿を消してしまう。どうやらヤバめの男が絡んでいるらしいが、それがアサミ自らの意思なのか、事故なのかすら誰もわからない。自分を選んでくれた人が消えた、しかも理由や真実が何もわからない。

「見つけてもらえた」者が突然に「見つけてくれた人」を失う、その時の、思い、導き出す答え…それが私が思うこの作品の「すごい」と思ったところ。

あなたが私に語ることが真実

色々な人が、色々なことを言う。自分が知らないアサミのことが、他人の口から語られる。何が真実かわからない(読者だって、その描写に翻弄されて、どこからどこまで過去の事実なのかただの妄想なのか願望なのか全くわからない…)。

ハタナカは悩み、傷つき、迷い、頭のなかがぐじゃぐじゃになる。そうしてそのぐじゃぐじゃがピークになったとき、吹っ切れたように思う。「誰に聞いても、本当のことなんて話からない。ほかの人が語る事実がアサミにとっての本当かはわからない」

他人の人が語る確からしい過去より、アサミの語る本当こそが真実と言い切るのだ。完全な肯定。事実を捻じ曲げるアサミ。でもそんな彼女が正直で、大好きだというハタナカ。実際にあったことか否かは問題ではない。アサミにとっての本当が、ハタナカにとっての真実。

嵐のような事実と噂の中でも消えない、盲信ともいえるほどの強い思い。決して、ハタナカは病んだり、正気を失っているわけではない。途中、迷ったりはしたものの、ここに至った彼女はの姿は強くて真っ当に見える。育ちの良い健全な女子高生という一般人に、このような妄信的な強い思いを持たせる展開を、説得力を伴って描けるのって結構すごい。

ハタナカ「アサミ!何を 何を…言いに来たの!?」「お願いアサミ お願い…見えなくなる前に」

アサミ「ばいばいハタナカ またね! 愛してるよっ!」

二宮ひかる.シュガーはお年頃.3巻.第18話「私を月までつれてって」より

アサミの言うことが、ハタナカにとってはゆるぎない真実。だから、ラストの幽霊か妄想かわからない、アサミの言葉だって、彼女にとっては紛れもない真実なのだ。

また、ハタナカは、15ページにわたってアサミがある日ひょっこり帰ってきて、二人一緒に大人になる妄想をする。妄想の中のアサミは若くして子供を産んで、落ち着いたらまた大学に通ったり海外に行ったりしてハタナカを驚かせる。「そうやってきみは いつもわたしの半歩先を歩いて わたしを蹴飛ばし進ませて」…そしてこの妄想のアサミに蹴飛ばされるようにして、ハタナカは進路を変える。頭の中のアサミだって、彼女にとっては真実なのだ。

事実だって超える

アサミは死んでしまったのか否かはわからない…が、死んでしまっているように私は思う。アサミが失踪した回の扉は彼岸花。アサミと姿を消したヤバい男だけが見つかった回の扉絵のアサミは死体のよう、いつもきちんとしていたリボンが乱れ髪が顔にかかって横たわっている。そしてハタナカの夢。描かれる情景はまるであの世、死んでないよ、ほら足もあるとスカートをめくるアサミの足は見えない…

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二宮ひかる.シュガーはお年頃.2巻.第12話「どうして」/二宮ひかる.シュガーはお年頃.3巻.第17話「初恋」

アサミが本当に死んでいるか否かはやはり実際のところわからない。ただ、ハタナカにとってはアサミの言うことが真実、もうただそれだけなのだ。ただ、ここにいないという事実を噛みしめるだけ。噂も何も関係ない。現実に起こった事象を超えて、自分が認識したことだけが真実となること。観測することで事象が固定される…なんてSFでよくあるけれど、ハタナカは恋の力でもって、自己の中でそれを実現しているのだ。

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手放しでハッピーエンドといえないし、けっこう読み手は突き放された感もある展開。けれど、選んでくれた者同士の強力な結びつきや、それに救われるハタナカの姿には確かに幸せを感じるし、二人がそれだけ思い合っているのがただただうれしい。思いの強さに圧倒される作品。

 

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今月新たに読んだ漫画【2015年2月】

よかった順にざっくり並べて。作品名/読んだ巻数/作者

【完結】

・ニコイチ/1~10/金田一蓮十郎

・子供の庭/1~2/いくえみ綾

・臨死!!江古田ちゃん/8/瀧波ユカリ

【単巻】

・こくごの時間/雁須磨子

・あのこにもらった音楽 /勝田文

・Daddy Long Legs /勝田文

・蝶のみちゆき /高浜寛

・ベイビーブルー /いくえみ綾

・レストー夫人/三島 芳治

【続刊アリ】

乙嫁語り/7/森 薫

・娘の家出/2/志村貴子

・コンプレックス・エイジ/1~3/佐久間結衣

宇宙兄弟/25/小山宙哉

GIANT KILLING/34/ツジトモ, 綱本将也

・ゴールデンカムイ/1/野田サトル

・ストレッチ/1~2/アキリ

・水色の部屋/上巻/ゴトウ ユキコ

ヒナまつり/1~5/大武 政夫

・日常/1~2/あらゐけいいち

・花宵道中/6/宮木あや子, 斉木久美子

聖☆おにいさん/11/中村光

・少女終末旅行 /1/つくみず

・コトノバドライブ/1/芦奈野 ひとし

・中学性日記/3/シモダアサミ

【続刊アリ…でもひとまずココまで】

・目玉焼きの黄身 いつつぶす?/1/おおひなた ごう

・百人遊女/1/坂辺周一

・あさひごはん/1/小池田マヤ

・イノサン/1~3/坂本眞一

・さんかく窓の外側は夜 /1~2/ヤマシタトモコ

・アニウッド大通り/1/記伊孝

・エイス/1/伊図 透

王妃マルゴ -La Reine Margot- /1 /萩尾望都

・LOVE理論/1/佐藤まさき, 水野敬也

 

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