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マリーマリーマリー(全6巻【完結】) / 勝田文 こんなに軽やかでおしゃれな漫画他にない

 マリーマリーマリー 1 (マーガレットコミックス)

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勝田文は大好きな少女漫画家の一人。強弱のない細線で構成される画面がとてもオシャレ。人物はとても美しい。こんな顔になりたい。かわいい小物や書き文字も素敵で、レトロモダンな雰囲気の素敵な世界を作っている。ストーリーはほんわかとした恋愛モノが多く、登場人物は皆どこか憎めなくて愛らしい。

このマリーマリーマリーは、基本1話完結の形式で、ヒーローヒロイン以外にもたくさんの魅力的なサブキャラが登場。彼らの日常のドラマが描かれている。オシャレな絵柄と画面構成、テンポよくコロコロと転がるストーリー、思わず微笑んでしまうような物語の結び。そんなお話が集まった全6巻30話。

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針灸院に勤めるリタは、ある日、往診のために訪れたライブハウスでギタリストの森田と出逢う。翌日、リタは愛車のクラシック・ミニを運転していたところ、通りがかった森田を車ではねてしまう。警察に連絡しようとあわてふためくリタに、針灸院で診てもらえば大丈夫と言って車に乗り込んでくる森田。そして言う。「もし僕と結婚したら森田リタになる モリタリタ かわいいでしょ。僕と一緒にならない?」

自由奔放で飄々としてて自然体な森田。そして、一般的な常識人と思いきや、なかなか思い切ったところのあるリタ。そしてふたりは、ひらめきに押されるようにして勢いのまま結婚してしまう…そんな急展開の第1話から物語は始まる。

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勝田文.マリーマリマリ.1巻.p194,195.#5より.:森田とリタと、キーアイテムのミニ・クーパー。リタは作中で特に美人扱いはされていないのだけれど、とってもかわいい。まつ毛キレイ…。アップと引きと、除夜の鐘。見開きでとても素敵な夜の演出。

なかなかの急展開だけど、森田の魅力や、画面の演出で、何となくいい流れが来てて勢いに乗るのも悪くないと思えてしまう。こんなに素敵な世界なら、ポンと結婚届に印を押しちゃうのも納得できてしまう。

そんな素敵な森田・リタ夫妻を中心に、これまた素敵な彼ら周辺の人々の日常物語が展開される。一話一話の中で起承転結がしっかりあって、場面がくるくる変わって楽しい。ミニやギター、ブルースといったアイテムもレトロで粋な雰囲気を作ってる。盛り上がりどころの大ゴマや見開きは、オシャレな一枚絵のよう。絵を追っているだけでも楽しい。

ゆるくてあたたかい脱力感

ところどころに散りばめられる、脱力感のあるやりとりやデフォルメされたイラストも本当にいい。このゆるい雰囲気に人々の愛らしさが表れている。「なんでもいいじゃーん」って感じで、色々な人の色々な事情を許容するおおらかさがこの作品には満ちている。どのお話も好きなのだけれど、特に気に入っているのが2巻のお葬式の話。クソジジイの葬式に集まる人々。話のオチも劇的で笑える。笑える葬式。良い。

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勝田文.マリーマリマリ.2巻.p144.#9より.:葬式に集まって個人の悪口を言う人々。容赦ないジジィ呼ばわり。作品には、若者だけでなくて中年・老人のキャラもたくさん登場する。老若男女、色々な姿の人がいて楽しい。

森田、最高のイケメン

のほほんとした世界のなかで、ヒーローの森田は時折ものスゴイ色気を見せる。少女漫画の中でもトップクラスのイケメンだと思う。いくえみ男子ならぬ勝田男子、本当に素晴らしい…。ギタリストという職業柄ふらふらしているかと思えば、何気に仕事の引き合いもあるし、人からは好かれるし、自然体でぶれてない。余裕と安定感がある。飄々とした雰囲気ながら、おさえるとこはおさえてる。顔のバランスも完璧。超かっこいい。

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勝田文.マリーマリマリ.1巻.p23.#1より.:リタを連れてライブハウスを抜け出す森田。この刺すような視線はヤバい…。ギタリストという設定も相まってか、手も素敵なんです。

愛されるべきごきげんな漫画

お話はテンポがよくて、オチはあたたかで、読んでいて本当に気分がいい。日常をごきげんに過ごすことが、この上ない幸せなのだと思えてくる。

不安が無くて、その世界に没頭出来て、画面が楽しくて、温かい気分になる。全編を通してこれほど安定して気分が良い漫画ってかなりスゴイと思う。しかしあまりこの漫画が話題になってないのは何でなんだろう。色々なメディアに取り上げられてもおかしくないのに(このマンガがすごいとかにランクインしててもおかしくないのに。個人的には、ノイタミナ枠とかでアニメ化したら、それはそれはポップでカラフルでテンポ良くて楽しそうだなぁなんて思ってる。)。もっとみんな読んだ方がいい作品。

 

この著者のほかの作品も大好き。「かたわれの街」なんか特に。短編も長編も、どの作品も安心して読める。次回作もとっても楽しみ。

 

 

マリーマリーマリー 1 (マーガレットコミックス)
 

 

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