漫画のメモ帳

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封神演義/藤崎竜(第1部【全23巻完結済】) 封神演義が大好きです

封神演義 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

一番好き

初めてはまりにはまった漫画が封神演義だった。大好きな漫画は他にもたくさんあるけれど「一番好きな漫画は?」と問われると、やはり初めて大好きになったこの漫画に帰ってきてしまう。思い出補正もあるのかもしれないが、それでもやっぱり面白い。

せっかく読んだ漫画を書き留めているのだから、一番好きなこの漫画についても書く。全23巻、23記事。

「ジャンプのなかで最も綺麗に終わった漫画の一つ」の始まり始まり

封神演義についての感想記事でよく目にするのが「ジャンプにしては珍しく綺麗に終わった漫画」といった言葉。「ジャンプにしては」の部分についてはあまり知識もないのだが、「綺麗に終わった」は超同意。最初から最後まで完璧な流れだと思う。

人気になるほど簡単には終わらせられず、人気がなければ終わりを急かされ…なかなか程良いバランスを保ちながら走り続けるのは難しいのだろう。だから、最初に好きになった漫画において、綺麗な終わりをリアルタイムで楽しめたのは本当にラッキーだったと思う。

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舞台は殷の時代の中国。道士太公望が、世をかき乱す悪しき仙女妲己を退治すべく奮闘する…という「ボス敵を倒す」わかりやすい初期設定。神話入り乱れる大昔とはいえ、一応我々の現実に通ずる史実の世界が舞台。導入の印象は週刊少年誌のファンタジーマンガとしては渋めかも。(しかしこの先宇宙人が出てきて宇宙のハイテクノロジー小惑星で最終決戦となるなんて、原作を知らない人で予想できた人はいないだろう…)

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藤崎竜.封神演義.1巻.1話より.扉絵:綺麗なカラーイラスト。ストーリーだけでなく、扉のイラストも三分の二以上が水墨がタッチの風景で結構地味め。大好きだけど。

第1回の太公望

腕力はなく体はひょろい、実年齢70代、知略が武器。少年漫画のステレオタイプな主人公の要素…強い、アツい、青い…そういった印象はあまりない。

1話でさっそく描かれたのは過去のトラウマ。父母を含む一族の虐殺、殷への恨み。当時はよくある設定だと思って流していたけれど、この先彼が失う多くのもののことを考えると、なんだか初めから失くしてばっかりの人だなと悲しくなる。飄々とギャグっぽく描かれる人だから一見そんな重くは見えないけれど。仲間が増えるのを喜び、仲間を失うことを何より悲しむやさしい人。大人で、いい意味で寂しい雰囲気がある(70代だからというわけではなく…)。風使いっていうのもいいアクセント。

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藤崎竜.封神演義.1巻.1話より.:この「安全な人間界をつくる」は物語の核となる太公望の信念。背景にトラウマがあるからこその強い意志。

VS.申公豹、VS.ちんとう、VS.王貴人

そして1話からテンポよくバトル。ただ、この時はまだ西岐対殷の構図が出来ていないから、あくまで個人戦妲己の刺客・ちんとうと、ノコノコ誘い出された妲己の妹・王貴人との戦い。お話も初期段階ということもあり「太公望がずるくて、でも人を守って、それで格上の敵に一矢報いるスゴイやつ」「封神や妖怪ってこういうシステム」という説明的内容。妲己太公望の活躍に驚きを見せたりしていたりして。妲己太公望も、まだまだ「底知れぬ」感じは出ていない。

太公望より一足先に、徐々にトばしだす妲己ちゃん

名物の残酷描写その1、炮烙。妲己、はじめはお色気誘惑が武器のわがままガール的な印象だったけど、そんなかわいらしいものじゃなかった。まず描かれるのが残酷さ。中国の容赦ない処刑のイメージそのままに、ジュッ人を焼く…この封神演義全体を通して、前半の妲己は軽いノリでかなりエグイことやってる。それも魅力。

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藤崎竜.封神演義.1巻.第3回より.:印刷の赤色も手伝ってザ・中国の処刑という雰囲気。後半はあまり中国っぽくなくなる気がする…初期独特の雰囲気。妲己の残酷さの描写はまだまだ序章…「図工が得意ですのん♡」て。

第五回:宮中孤軍…だんだん封神演義らしくなる

妲己の妹・王貴人を人質に利用し、そのまま妲己や紂王のいる宮中に入り込む。これまでの1対1の細かいバトルは、実はあまり封神演義っぽくない。これからが本番。

妲己においても、話術で一瞬太公望が優位に立ったかに思われたけど、そんなことは何の意味もなかった。妲己は痛くもかゆくもない。何の手も打てず徐々に追い込まれる太公望。そして直接仕掛けにくる妲己

妲己に翻弄される」という構図はこれからずっとついて回る(というか、妲己には最後の最後まで翻弄される)。この宮中孤軍からが本当のスタート。

結局、太公望は捕らえられてしまう。そして結末は、太公望と血を同じにする羌族達の処刑。太公望という個人の戦いではおさまらない。その規模はこれからどんどん大きくなる。

今みると面白いところ

太公望:ちょっと若者っぽい。まだ「策士」とか「飄々」とかそういう雰囲気弱い。表情もわりと溌剌としてるかも。

妲己太公望の活躍に驚いたりしてる。常に一段上からモノをみている感じがだから、わりと些細なことに驚いている彼女は新鮮。あと、この時はまだ太公望を「微生物」扱いしてたりして。「伏羲」であることまでとはいかずとも、「王奕」の片割れだとはまだ知らないのか…?

・武成王:顔若い、割と細い。オヤジ臭4割減。

・スープー:こんなに痩せてたっけ…

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藤崎竜.封神演義.1巻.第5回より.武成王/藤崎竜.封神演義.1巻.第1回より.スープー:特にスープー、別物。

・朝歌:まだ人々が占いやる位活気がある。まだ全然マシな状態だった。

・封神の書:蝉玉とかいるし…後で原始からの説明も二転三転する。あまり意味がないリスト。

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藤崎竜.封神演義.1巻.第2回より.:ばっちり描かれているせんぎょく。

・「神界」の設定:最後に行き着く場所。ラストで大いに役立つとは。連載中は全く意識してなかったが、最初からちゃんと言われてた。

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藤崎竜.封神演義.1巻.第1回より.:結構小さいコマでさ~っと読み流しちゃってた。

・「原始は妲己を倒せない」:ギャグとお約束設定の言い訳ではなかった。原始のじじいめ…

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藤崎竜.封神演義.1巻.第1回より.:漫画のキャラが「マンガ」を語る、ただのお約束ギャグコマだと思ったけれど

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一巻はここまで。今見るとまだ助走段階な印象。それでも当時は、捉えられた太公望と処刑寸前の羌族達がどうなってしまうのか気になってしょうがなかった。

太公望の意図するか否かに関わらず戦いは大きくなる。一人の力だけではどうにもならないことが多くなり、犠牲になるのも自分だけではすまない。それでも流れに抗って戦い抜く。そんな話の始まり。

 

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