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春原書留所

普通の会社員が書く漫画アニメの感想・解説ブログ。基本完全ネタばれです。安月給なのに漫画買いすぎて毎月金欠。

子供はわかってあげない/田島列島(上下巻【完結】) 強い子供たちがつくるやさしい日々

漫画 ★★★★★

子供はわかってあげない(上) (モーニング KC)

 田島列島という新人?の作品。Amazonでの紹介はこんな感じ。

水泳×書道×アニオタ×新興宗教×超能力×父探し×夏休み=青春(?)。モーニング誌上で思わぬ超大好評を博した甘酸っぱすぎる新感覚ボーイミーツガール。 

ボーイミーツガール…でもふつう

確かに少年と少女が出会っているのだけれど、学校の屋上で同級生同士が顔を合わせるという、あくまで普通の日常から話は始まる。瞳輝く少女少年が雲一つない青空のもと、髪をなびかせてハッと見つめあう…なんて演出は一切ないし、そんな絵柄でもない。出会いはボーイミーツガールと呼ぶにはいささか地味に感じられるくらいの日常感。

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田島列島.子供はわかってあげない.上巻.①より.:屋上でアニメのキャラを描く少年(もじくん)と意気投合する水泳少女(サクタさん)。地味な絵、地味な二人。モジ君なんて顔のパーツの線の少ないこと…ヒーローなのにww。

そんな二人は、ちょっと非日常的な夏休みを過ごすことになる。離婚して行方がわからなくなっているサクタさんの父親を、探偵をやっているもじくんの姉(性格には性転換しているから兄)に捜索してもらうことになる。しかし捜査を進めると実はこの父親は新興宗教にかかわっていて、それで教団の金を持ち逃げしていて、超能力者で…文字に起こすと詰め詰めなファンタジー。でも読んでいると不思議とまったくそんな印象はない。それすら彼らの日常の延長のような空気で話は進む。

まっすぐな子供が思うこと

「離婚して行方のわからなくなった父親」に会いたくなったとき、サクタさんは今の家族のことを考える。暗い表情になるわけでもなく、当たり前のように思う。でも会いたいから合宿をサボって旅にでる。

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田島列島.子供はわかってあげない.上巻.②より.:この「コレ(幸せ家族)、壊れちゃうかな?」なんてセリフは、暗くシリアスに描かれても不思議でないのだけれど、サクタさんの表情はこの通り。変に騒ぐでもなく、でも思慮が足りないわけでもなく…立派だよ。大人でも難しいよ。

お兄さんが「お姉さん」になったもじくん。普段はお姉さんにも普通に接するし、それこそ家の書道教室を手伝ったりと十二分にできた人物だけど、何か思うところがないわけではない。

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田島列島.子供はわかってあげない.下巻.⑭より.:変に振り回されないよう、取り乱さないよう。周りも悲しむし、自分もへこむから。逆光の背中で語る。サクタさんに通ずる強さと優しさ。

二人とも、一般の高校生以上にできた子。誰かを悲しませたりもしない。周りの人だって彼らを大事にしているし、本人たちだって何か我慢をしているつもりもない。日常はギャグを挟むユーモアや余裕もあって明るく穏やか。まっすぐな子たちだから、そんな日々を送れている。でも心の中には何かがあって、だから行動をする。

そしてああ青春

じわりじわりと高まる気持ち、縮まる距離。そして…青春だね。まったく派手じゃない。けどこの上なく甘酸っぱい。セリフも絵も本当にいい。(恋愛的な意味に限らず)互いを思うことが、心の中の何かを包んでいく感じ。老人視点でにやにやしちゃう。

そして最後までよむと、これはやっぱりまぎれもないボーイミーツガールだったと思う。何の派手な演出もないのに、こんなにきらきらしているなんて。ギャグも交えてほいほい読ませて、実はしっかり盛り上げているあたりうまいと思う。ここぞという時のセリフもいい…素敵な漫画を読んだ。

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田島列島.子供はわかってあげない.上巻.④より.:テキザイテキション(適材適所)。こんな感じで、小さいコマながら結構な頻度でキレのあるギャグをブチ込んでくる。笑う。天才か。

 

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