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春原書留所

普通の会社員が書く漫画アニメの感想・解説ブログ。基本完全ネタばれです。安月給なのに漫画買いすぎて毎月金欠。

封神演義/藤崎竜(第3部【全23巻完結済】) 太子と戦争前夜

今更語る封神演義第3巻。他の巻はこちら→1巻/2巻

封神演義 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)

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ああ雷震子が輝いている

西への旅路、雷震子登場の巻。リアルタイムで読んでいた時は、哪吒、楊戩と並ぶ第3の仲間来た!…と思ったのものでした。仙界大戦でまさかの欠席だったり、表紙になれなかったりと、何かと不遇なヤツ。姫昌の息子なんてめっちゃイイポジションなのに。「仙人が人間界に干渉しすぎるのはよくない」という流れのために、その設定がフルで活かされることもなく。「バカ・火力系」っていう要素が哪吒とかぶっているせいもあって、影が薄くなってしまった。でも好き。

この雷震子戦でも太公望は余裕な感じ。喧嘩に付き合ってあげる様は、おじいちゃんと孫のようですらある…雷震子の必死なバカ真っ直ぐさに、太公望の飄々とした感じが強調される。

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藤崎竜.封神演義.3巻.第18回「太公望・アフロになる」より.:遊んでいる太公望。雷震子、八重歯の褐色キャラなんて目立つビジュアルなはずなのに。

太子…

そして登場する殷の太子2人。彼ら兄弟の存在はもうただ悲しい。「真面目でしっかりした兄と、無邪気な弟」なんてテンプレ性格だし、派手な仙人道士がバンバン登場する中での「人間の子供二人」なんて、そんなに印象深いものでもなかったのに。このありがちな性格設定が後にあんなに効いてくるなんて。

妲己から逃れるため、殷を離れた太子。そのまま太公望について行こうとする2人へ申公豹の説教が始まる。殷王家としての義務と宿命を説いているんだけれど、殷vs周の構図もまだ出来途中なこともあって、初読の時はそこまで重くとらえていなかった。それより、申公豹のラスボス感の方に気を取られていて、太子の存在なんて「超強い申公豹と太公望のピンチ」という形を作るためのアイテムくらいにしか思っていなかった。

しかし2回目以降に読むと、もうそんな軽くは見れない。ここで申公豹に従っても妲己の手にかかり、太公望側の助けに乗って崑崙に行ってもあんな最後になって…もうどうしようもない大きな流れのど真ん中にいた二人。

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藤崎竜.封神演義.3巻.第21回「太子二人Ⅱ」より.:強い兄と弱気な弟。この時の殷洪は、身を挺して守ってくれる兄の後ろで不安そうに小さくなっているだけだったけど…。後のことを考えるとこのシーンだけで悲しくなるよ。

封神計画の再説明と戦争の始まり

封神計画が「ただ悪い仙人道士を倒すだけでない」と気づいた太公望。一旦西への旅は辞め、崑崙に戻って原始から計画の内容を問い質す。計画は、良い王による統治を実現し、人間界を良い方向へ導くためのものとのこと。まぁ結局、この原始の説明も再び嘘なんですが…大事なのは当面のゴールが「太公望が悪い敵を倒す」という単純なものから、「殷を倒し、周を起こす」というものに変わったことが明らかに示された事。そして最後に聞仲の登場…来たぞ…。

今みると、太子登場、申公豹の言葉からの封神計画再説明、聞仲登場という流れで「国対国の話にスケールアップしますよ」ってことがかなり丁寧に説明されている。

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藤崎竜.封神演義.3巻.第24回「未来視たちのディアレクティーク 下」より.:聞仲登場。めっちゃかっこいい。この「紂王の臣下」というところが重要。仙人たちのドンパチだけではもう済まない。

3巻タイトル「未来視たちの弁証法

第23話では、申公豹と太公望の間で二太子の立場についての議論が交わされ、殷郊自身も「自分は生きてやらなくてはいけないことがある」という。24話では、太公望と原始の間で戦争と犠牲についての議論が交わされ、最後に登場した聞仲も戦いについての持論を展開している。

この23話、24話には「未来視たちのディアレクティーク(弁証法)」というタイトルがついているけれど、「未来視たち」とは、これら太公望、申公豹、原始、聞仲、太子のことだろう。激しく時代が動く中で、それぞれの理論や信念がぶつかり合い、それらが行き着く先は誰かの理論を単純に肯定したり否定したりするものではない…少年漫画で随分渋いタイトルをつけたもんだ。

 

今みると面白いところ

・申公豹の語る封神計画:「ですが彼が封神計画の真の意味を知れば…」というセリフの後の原始の説明という、ミスリードを誘う演出。申公豹のは打倒女媧のことを指している。

・水屋敷の主人:雷震子に捕まったときの頭髪の乱れ方が現代サラリーマンそのもの。流石に古代中国にバーコード禿はいなかったろうに…

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藤崎竜.封神演義.3巻.第18回「太公望・アフロになる」より.:このコマだけみると古代中国SF漫画に見えないぞ。

 ・かわいい方弼

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藤崎竜.封神演義.3巻.第20回「太子二人」より.:なにこの顔超かわいい…

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読んでいるときは雷震子や申公豹(と、汚らわしい土行孫)のインパクトが強い3巻。でも読み終わった後に振り返ってみると、心に残るのはやはり太子たち。とてつもなく大きな時代の流れの中で必死に抗う姿は、強くてどこかもの悲しい、まさに封神キャラって感じの子供たちだった。

 

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